姫路科学館が収蔵する「小林平一コレクション」のご紹介です。
コレクションは9年間の整理事業が終了し目録を刊行しています。
小林平一氏(1923年-2002年)は、日本の古瓦の研究・復元に取り組み、世界文化遺産・国宝姫路城をはじめ、多数の文化財修復に携わっていました。
その一方、若い頃から鳥類や昆虫類の観察・採集を続け、多くの種が絶滅の危機に瀕する状況を危惧し、今いる種を記録に残し、未来へ伝えることを目的として、鳥類、昆虫、ほ乳類など幅広い分類の標本の収集に力を注がれていました。
小林平一コレクションの自然史資料は遺族より姫路市に譲渡され、姫路科学館の収蔵室で整理・保存・管理し、常設展示室で一部を入れ替えながら公開・展示・解説しています。また、生物多様性保全の学術的研究にも活用されています。
小林平一氏の収集した標本は、その多くが貴重なものであり、これからの入手は非常に困難な種ばかりです。これらの貴重な標本群を、十分な保存と厳重な管理のもとで次世代に残し続けていくことが、姫路市立の博物施設である当館が背負うべき重大な公的・社会的責務であると考えています。
小林平一氏の昆虫コレクションは、11目75科3484種38840頭に分類整理されました。大きくて綺麗な標本が多くあります。
蝶類標本は、昆虫標本の中で種数で約70%・頭数で約80%を占めます。特にトリバネアゲハの標本(約8500頭)を中心に、アゲハチョウ科のコレクションが充実しています。
クワガタムシ科6000頭をはじめ、多数の標本があります。
1950年代から1970年代にかけて収集されたものが105種・約8400羽あり、採集地が特定可能なものとしては、日本、韓国、台湾をあわせた3地域の標本が大半を占めています。38種438羽に及ぶワシ・タカ類を中心に、日本では野生絶滅したコウノトリ、トキ、キタタキの標本や、トリバネアゲハ採集の際に収集したと思われるフウチョウ科の標本もあります。
ウシ科、シカ科などを中心に全身や頭部剥製、は虫類等の標本が約120点あります。
姫路科学館では膨大な小林平一コレクションについて、鳥類を3年、昆虫類を9年かけて同定・整理してきました。すべて目録として公表し、世界的なデータベース(GBIF)にも登録しています。
小林平一コレクションは、未来に残す貴重な財産として大切に保管すると共に、展示や研究を通じた活用も行っています。